先に結論:私は「一生住む家」として平屋を選びました
これから家を建てる方に、いきなり結論からお伝えします。
私は、一生住み続ける前提なら平屋が合理的だと考え、自宅を平屋で建てました。理由はシンプルで、家は「建てた後の20年・30年」のほうがずっと長いからです。
私はリフォームの仕事を長くやってきました。仕事柄、築20〜30年たった戸建てを数えきれないほど見てきました(のべで、年間およそ500棟・20年で1万棟ほど)。新築の現場ではなく、「歳をとった家」と「歳をとったご家族」を、毎日のように見てきた立場です。
その経験から言えるのは、新築のパンフレットやモデルハウスは“建てた瞬間”しか見せてくれないということ。でも実際の暮らしは、そこから何十年も続きます。この記事では、その「先のリアル」を踏まえて、私がなぜ平屋を選んだのかを正直に書きます。
私は富裕層でもFIRE達成者でもない、ごく普通の会社員です。年収も住宅ローンも、みなさんと同じ目線です。だからこそ「現実的に手が届く範囲」で考えた話として読んでください。
1万棟見て分かった「家は2階を使わなくなる」
まず、いちばん伝えたいことから。築20〜30年のお宅にお邪魔して、本当に多く見た光景があります。それは——
「お子さんが巣立った後、2階がまるごと物置になっている」
そして、ご夫婦が60代・70代になると、ほとんどの方が生活を1階に移します。1階の和室に布団を敷いて寝て、日中はリビングで過ごす。階段の上り下りがつらくなり、2階の子ども部屋は誰も使わなくなる——これが、私が現場で何度も見てきた「家の終盤」のリアルです。
つまり、多くの2階建ては「人生の後半、半分しか使われない家」になっていきます。建てるときは「子ども部屋が2つ要る」「来客用に」と考えますが、その必要があるのは実は人生のほんの一時期なんですね。
私はこの現実を毎日見ていたので、「だったら最初から、生活が完結する平屋でいいんじゃないか」と考えました。
「建ててから30年」のお金で考えると景色が変わる
家の話になると、どうしても取得費(買うときの値段)ばかりに目が行きます。でも本当に効いてくるのは、そのあと何十年も払い続ける維持費です。ここを、私が実際に試算した数字で比べてみます。
マンションの場合:下がらない固定費
マンションは管理が楽な反面、固定費がずっと続くのが見落とされがちです。
- 管理費
- 修繕積立金(外壁・屋根などの大規模修繕に充てる積立。最低でも月15,000円ほど、月25,000円というケースも珍しくありません)
- 固定資産税
- 駐車場代(地方だと1人1台が当たり前で、台数が増えると効いてきます)
これらを合計すると、毎月4〜5万円が、住宅ローンとは別にずっとかかり続けるイメージです。しかもこの額は、30年後も下がりません。
戸建て(平屋)の場合:先に備えて、ならす
一方の戸建ては、外壁塗装や屋根、水回りの交換を自分のタイミングで・自分の判断でやります。我が家は、屋根・外壁・シーリングを30年もつ高耐久の仕様にしました。すると、
- その30年間は大きな外装メンテがほぼ不要
- その分のお金をコツコツ積み立てておく
- 15年ごとの給湯器交換、30年での水回りリフォーム(キッチン・浴室・トイレ)に充てる
この考え方だと、ならして月1万円ほどで維持できる計算になりました。固定資産税は地域や土地で変わりますが、我が家の場合は条件が重なって月5,000円ほど(一般的には月1万円前後を見ておくと安心です)。合計すると、維持コストは月2万円ほど。先ほどのマンションの月4〜5万円と比べると、長く住むほど差が開いていきます。
マンションが悪いという話ではありません。転勤がある・リセール(売却)を重視する・流動的に住み替えたいなら、マンションが有利な場面は確実にあります。私は「転勤がなく、ここに骨をうずめる」と決めていたので、環境を固定できる戸建てを選んだ、というだけです。家選びは自分の人生計画とのマッチングで決まります。
「後悔しない設計」は、壊れる場所を知っていると見えてくる
平屋にしたもう一つの理由が、メンテのしやすさ=壊れにくさです。リフォームの現場でいちばん多いトラブルは、なんといっても雨漏りです。そして雨漏りしやすい家には、はっきりとした共通点があります。私が自宅で「採用しなかった」のは、まさにそこです。
- 複雑な凹凸の多い形 … 継ぎ目(取り合い)が増えるほど、雨漏りリスクは上がります
- 軒(のき)のない家 … 今どきの人気デザインですが、外壁が紫外線と雨に直接さらされて傷みやすく、吹き込んだ雨が入りやすい
- 勾配のゆるい屋根 … 傾斜がゆるいほど水がはけず、雨漏りしやすい
- 出窓 … 見た目はいいですが、雨漏りの定番ポイント
- ベランダ … 多くのお宅で「結局使わなくなる」のに、雨漏りリスクは非常に高い。平屋なら、そもそも要りません
ポイントは一つで、継ぎ目を減らすほど、雨漏りもメンテ費も減るということ。平屋は構造がシンプルなので、この点でとても有利です。
日本の住宅はもともと「30年で建て替える」前提で作られてきました。今は適切に手を入れればもっと長持ちしますが、そもそも設計がシンプルで丈夫なら、最小限の手入れで長く住める。私はこの「30年・その先」を基準に設計を考えました。
正直に言うと、平屋にもデメリットはあります
ここまで平屋のいい面を書いてきましたが、いいことばかり並べるのは信用できないと私自身が思っているので、デメリットも正直に書きます。
- 同じ床面積なら土地が広く要る … 2階に積めない分、平屋は広い敷地が必要です。都市部や地価の高い地域では、ここがいちばんのハードルになります。
- 建物の坪単価は上がりやすい … 屋根と基礎の面積が相対的に大きくなるため、同じ広さの2階建てより坪単価は高くなる傾向があります。
- 防犯・プライバシーの工夫が要る … 窓がすべて地上にあるので、配置の工夫が必要です。
- 日当たり・通風 … 周りの建物との関係で、間取りの工夫が要ります。
つまり平屋は「土地に余裕を持たせられるか」が勝負どころ。地価が高い場所では、無理に平屋にこだわらないほうがいいこともあります。ここは正直にお伝えしておきます。
我が家の実例(普通の会社員が建てた平屋)
参考までに、我が家の数字を出しておきます。地方都市(三大都市圏の郊外を想定してください)での話です。
- 延床24坪の平屋/3人家族
- 土地:1,200万円(75坪)
- 建物:2,200万円
- 外構・諸費用込みの総額:約4,000万円
- 耐震等級3・断熱等級7・太陽光あり
土地はかなり安く買えましたが、これには事情があります(接道や整備に難があり、自分で交渉して整えました)。このあたりの「土地探しの実録」は別記事で詳しく書きます。
ひとつ強調したいのは、断熱等級7で建てたこと。これは現在の最高等級で、いわば“世界最高水準”の断熱性能です。実は国は、住宅の省エネ性能を段階的に引き上げています。
- 2025年度:省エネ基準への適合が義務化(断熱等級4相当が最低ラインに)
- 2030年度:ZEH水準(断熱等級5)が最低ラインへ引き上げ予定
つまり、国が2030年に最低ラインにしようとしている等級5を、はるかに超える等級7で建てたことになります。「長く住む家ほど、性能は先取りしておく価値がある」——これも、先のリアルを見てきたからこその判断でした。(断熱等級の中身は別記事でやさしく解説します)
これから家を建てる、普通の会社員のあなたへ
最後に、整理します。私が平屋を選んだのは、こういう順序の考え方でした。
- 家は「建てた後」が長い。20年・30年後の暮らしから逆算する
- 多くの家は老後に2階を使わなくなる。なら最初から生活が1階で完結する形に
- 取得費より、30年の維持費で比べる。継ぎ目の少ない設計は壊れにくく、お金もかからない
- ただし平屋は土地に余裕が要る。地価次第では2階建ても十分アリ
家選びに唯一の正解はありません。大事なのは、モデルハウスの“今”だけでなく、“30年後の自分と家族”を一度想像してみることです。それだけで、選ぶべき家はかなり見えてきます。この記事が、あなたの家づくりの判断材料になればうれしいです。
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